読み方ガイド一覧2026-08-11 ・ 約7分で読める

貸借対照表 (B/S) の読み方 — 会社の体力は「財産の写真」に出る

決算のニュースで話題になるのはもっぱら売上と利益 — つまり損益計算書の数字です。しかし、会社の「体力」が分かるのは貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)のほうです。財務が安定しているか、借金が重すぎないか、倒れにくいか。こうした問いへの答えはすべてここに載っています。

この記事では、貸借対照表(B/S)の構造と、初心者がまず見るべき3つの場所を説明します。

貸借対照表は「ある時点の財産の写真」

貸借対照表は、期末というある一日の時点で、会社が何を持っているか(資産)誰にいくら返す義務があるか(負債)、**差し引きで自分のものはいくらか(純資産)**を並べた表です。英語では Balance Sheet、略してB/S(ビーエス)と呼びます。

期間の動きを写す損益計算書が「動画」なら、貸借対照表は「写真」です。この動画と写真の関係(フローと残高)は決算読解の土台なので、専用の記事も用意しています。

「資産 = 負債 + 純資産」— 必ず左右が一致する

貸借対照表には、必ず成り立つ式があります。

資産 = 負債 + 純資産

右側(負債・純資産)は「お金をどう集めたか」、左側(資産)は「集めたお金が今どんな形になっているか」を表します。たとえば100億円の資産を持つ会社は、その100億円を借入60億円と自己資金40億円で賄っている — という具合に、集め方と使いみちを両側から見るので、合計は必ず一致します。名前の「バランス」はここから来ています。

この式は決算書の検算の土台でもあります。当サイトの分析レポートが金額の整合を機械で検算できるのは、会計にはこうした「必ず成り立つはずの式」がいくつもあり、成り立たない数字は転記や解釈のどこかが誤っていると機械的に判定できるからです。

見る場所1: 純資産 — マイナスなら「債務超過」

まず表の右下、純資産を見ます。これまでの利益の蓄積と株主からの出資の合計で、会社の正味の持ち分です。

純資産がマイナスの状態を**債務超過(さいむちょうか)**と呼びます。資産をすべて売っても負債を返しきれない状態で、上場企業の場合は解消できないと上場廃止につながる基準にも関わります。ここが厚いかどうかは、会社の耐久力の最も基本的な確認点です。

見る場所2: 自己資本比率 — 財務の安定度

自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産

自己資本は、純資産とほぼ同じものと考えて構いません(厳密には純資産から非支配株主持分などを除いたものです)。総資産のうち、返す必要のないお金(自己資本)で賄われている割合です。高いほど借入への依存が小さく、不況への耐久力が高い、というのが基本の読み方です。

ただし目安は業種でまったく違います。メーカーで40〜50%は珍しくない一方、銀行は預金という負債を預かって運用する商売なので、1桁%が普通です。銀行の自己資本比率が低いこと自体は危険信号ではありません。「高い低い」は必ず同業種の水準と比べて判断します。

見る場所3: 流動と固定 — 「1年以内」の区切り

資産も負債も、おおまかには「1年以内に現金になる/支払期限が来る」ことを目安に、流動とそれより先の固定に分けて表示されます(商売のサイクルの中で回っているものは、期間によらず流動に入ります)。

短期の支払い能力を見るには、流動資産と流動負債を比べます(流動資産 ÷ 流動負債を流動比率と呼びます)。1年以内に出ていくお金より、1年以内に入ってくるお金・すぐ使えるお金が多ければ、当面の資金繰りに余裕がある、という見方です。これも業種による差が大きいので、水準そのものより前期からの変化に注目するのが実用的です。

手順 — 前期末と比べて「大きく動いた科目」を探す

貸借対照表は1時点の写真なので、1枚だけ眺めても動きは見えません。実際の読み方は比較です。

  1. 決算短信の貸借対照表で、前期末の数字と並べて見る。 短信には必ず前期末が併記されています
  2. 大きく増減した科目に印をつける。 現金が急減した、借入が急増した、在庫が積み上がった — など
  3. その理由を探す。 大きな動きには必ず理由があり、短信の説明や有価証券報告書の注記のどこかに書かれています。書かれていない大きな動きこそ、注意して見るべき場所です

3ヶ月ごとの写真を並べれば動画になります。1枚の写真で判断せず、時系列で見る癖をつけるのが、貸借対照表と付き合う一番の近道です。


本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。

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