読み方ガイド一覧2026-08-11 ・ 約7分で読める

決算分析でまず見る指標 — 利益率・ROE・自己資本比率の使い方

1,000億円の利益は大きいでしょうか。年間数兆円を稼ぐ巨大企業にとってはごく一部の数字で、中堅企業にとっては巨大な数字です。決算の数字は絶対額のままでは比べられません — 規模をならして「比べられる形」にする道具が指標です。

この記事では、決算分析で最初に使う指標を4つの問いに整理し、計算式と使うときの注意点をまとめます。損益計算書貸借対照表の記事を先に読んでおくと、分子・分母の意味がすっと入ります。

指標は「4つの問い」に答える道具

問い 観点 代表的な指標
効率よく稼げているか 収益性 売上高営業利益率
元手を活かせているか 資本効率 ROE・ROA
財務は安定しているか 安全性 自己資本比率
伸びているか 成長性 増収率・増益率

ひとつの指標で会社の全部は分かりません。4つの問いに1つずつ、計4個をセットで見るのが、少ない労力で全体をつかむ型です。

収益性: 売上高営業利益率

売上高営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高

「100円売って、本業の利益が何円残るか」です。業種による水準差が大きく、薄利多売の小売業では数%が普通、ソフトウェアや製薬では20%を超える会社もあります。だから他社と比べるなら同業種と、が原則です。同じ会社の過去との比較は業種差の影響を受けないので、初心者にはまずこちらをおすすめします。利益率が数年かけて上がっているか下がっているかは、それだけで会社の変化を物語ります。

資本効率: ROE と ROA

ROE (自己資本利益率) = 当期純利益 ÷ 自己資本

株主のお金を元手に、1年でどれだけ利益を生んだかです。日本では2014年の通称「伊藤レポート」が最低限8%という水準を掲げて以来、経営目標として広く意識されています。

ただしROEには有名な落とし穴があります。借入を増やして自己資本を薄くするだけでも、利益が同じならROEは上がります。稼ぐ力が変わらなくても財務のリスクを取れば数字が良くなる、という構造です。だからROEは単独では使わず、

ROA (総資産利益率) = 当期純利益 ÷ 総資産

自己資本比率をセットで見ます。ROEが高くてROAが低く自己資本比率も低いなら、その高ROEは借入で持ち上がっている可能性が高い — と機械的に疑えます。なおROAの分子には営業利益や経常利益を使う流儀もあり、資料によって定義が違います(後述の規律3)。

安全性: 自己資本比率

自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産

詳しくは貸借対照表の記事で扱ったとおりです。水準は業種で大きく違うため、同業比較と時系列の変化で見ます。

成長性: 増収率・増益率

売上高と利益の前年比です。ここでの注意はひとつ — 1年分の伸び率は、一過性の要因で簡単に跳ねることです。資産売却益で増益率+40%になっても、来期に続く保証はありません(一過性の見つけ方)。できれば3〜5年の推移で、伸びが続いているかを見ます。

指標を使うときの3つの規律

  1. 単独で判断しない。 高ROEは借入で作れ、高利益率は一過性で作れます。4つの問いをセットで
  2. 比べる相手を先に決める。 「過去の自分」と「同業他社」。異業種との比較は水準差のノイズが大きすぎます
  3. 分子・分母の定義を確認する。 ROAの分子が純利益か営業利益か、自己資本に何を含めるかは資料によって違います。定義の違う指標を並べて比べるのは、単位の違う数字を足すのと同じです

当サイトの分析レポートでは、こうした指標の計算はAIではなくプログラムが行い、計算に使った元の金額は開示資料と機械照合しています(仕組みの解説)。指標は便利な道具ですが、分子・分母の数字が正しくて初めて意味を持つ — これはどの資料を読むときにも変わりません。


本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。

決算分析でまず見る指標 — 利益率・ROE・自己資本比率の使い方 | かんたん財務分析くん