株式会社INPEX 2026年12月期 第2四半期 決算かんたん解説

2026-08-26 作成機械検算 87%

今回の決算でわかったこと

  • 純利益は増えたが、その主役は「税負担の減少」だった  2026年1〜6月期の親会社に帰属する中間利益は2,631.5億円と、前年同期比で+396億円(+17.7%)の増益でした。ところが税引前の利益は6,443.5億円と前年同期比△6億円(△0.1%)のほぼ横ばいです。増益分のほぼすべては、法人所得税費用が前年同期比△428億円(△10.7%)減ったことで生まれました。事業そのものの稼ぎが増えたわけではなく、税負担が軽くなった分が利益に乗った格好です。なお中間期の税費用は「見積年間実効税率法」という暫定的な計算方法で算出されており、通期の見積りが変わると下期に修正が入る可能性があります。

  • 売上は減収、利益を支えたのはイクシスプロジェクト一本  売上収益は10,005.0億円と前年同期比△483億円(△4.6%)の減収でした。原油の販売数量が22.8%減ったことが主な要因で、価格上昇(+492億円)と円安(+556億円)で一部を補いましたが、数量減(△1,695億円)を埋めきれませんでした。セグメント別に見ると、豪州のイクシスプロジェクトが利益1,730.7億円(前年同期比+340億円)を稼ぎ、全社の増益分+396億円のほぼすべてを担いました。一方、国内O&Gセグメントの利益は172.9億円から78.8億円へ半減(△54.4%)しており、増収にもかかわらず原価が膨らんだことが響いています。

  • 手元の現金は低水準のまま、余剰資金は定期預金に積み上げた  現金及び現金同等物は2,161.9億円と低水準ですが、その他の金融資産(流動)が前期末の4,773.9億円から7,443.8億円へ大きく増えています。この増加の主体は定期預金で、当中間期に6,740.6億円を預け入れました。営業キャッシュフローは5,538.9億円(前年同期比+1,259億円増)と好調に見えますが、会社自身が増加の主因を「法人所得税の支払額の減少等」と説明しており、稼ぐ力が改善したというより税支払のタイミングがずれた影響が大きいと読めます。

  • 期末後に大型の株主還元と上方修正を発表、下期の資金流出は相応の規模になる  決算発表と同じ2026年8月7日に、上限1,400億円(発行済株式の4.3%)の自己株式取得枠を決議しました。中間配当は1株56円・総額651.4億円(効力発生は2026年9月1日)で、通期純利益予想も5,100億円へ上方修正されています。下期には未払法人所得税1,243.4億円の支払、自己株式取得1,400億円枠の実行、中間配当651.4億円の支払が重なる見込みで、資金の動きが活発になる局面です。また7月10日には発行登録追補を提出済みで、社債発行の準備が進んでいる可能性があります。

  • LNG購入コミットメントが半年で大幅に増加、簿外の将来支払が膨らんだ  LNG等の購入契約残高は前期末の18,743.4億円から当中間期末には30,528.0億円へ急増しました。これは貸借対照表(バランスシート)には載らない将来の支払約束です。総資産83,869.0億円と並べると無視できない規模感で、将来にわたって外貨建ての支払フローが構造的に増えたことを意味します。増加の内訳(新規契約なのか、価格・為替前提の見直しなのか)は開示からは確認できず、通期の有価証券報告書での詳細開示が待たれます。


数字で見ると

  • 売上収益:10,005.0億円(前年同期 10,488.7億円、△483億円・△4.6%)
  • 営業利益:6,187.1億円(前年同期 6,168.8億円、+18億円・+0.3%)
  • 税引前利益:6,443.5億円(前年同期 6,449.8億円、△6億円・△0.1%)
  • 法人所得税費用:3,597.9億円(前年同期比△428億円・△10.7%)
  • 親会社帰属 中間利益:2,631.5億円(前年同期 2,235.3億円、+396億円・+17.7%)
  • 親会社帰属 中間包括利益:4,269.6億円(前年同期はマイナス)
  • 1株当たり中間利益:226.33円(前年同期 186.65円)
  • 総資産:83,869.0億円(前期末 77,352.0億円、+6,517億円)
  • 親会社所有者帰属持分:51,025.7億円(前期末 47,471.6億円)
  • 親会社所有者帰属持分比率:60.8%(前期末 61.4%)
  • 社債及び借入金(流動):6,618.2億円(前期末 5,414.8億円)
  • 社債及び借入金(非流動):6,565.1億円(前期末 7,032.6億円)
  • 未払法人所得税:1,243.4億円(前期末 130.4億円)
  • 現金及び現金同等物:2,161.9億円(前期末 1,684.1億円)
  • その他の金融資産(流動):7,443.8億円(前期末 4,773.9億円)
  • 営業キャッシュフロー:5,538.9億円(前年同期比+1,259億円)
  • 投資キャッシュフロー:△4,247.0億円
  • 財務キャッシュフロー:△910.2億円
  • 定期預金の預入(グロス):6,740.6億円
  • LNG等購入契約残高:30,528.0億円(前期末 18,743.4億円)
  • 南西カスピ海石油 株式49%取得額:599.1億円
  • 自己株式取得枠(期末後決議):1,400億円(発行済の4.3%)
  • 中間配当:1株56円・総額651.4億円
  • 通期純利益予想(上方修正後):5,100億円

この会社は何で稼いでいるか

  • 収益の柱は海外の石油・天然ガス開発、なかでもイクシスが突出している  INPEXは石油・天然ガスの探鉱・開発・生産・販売を主業とする日本最大級のエネルギー開発会社です。報告セグメントは「国内O&G」「海外O&G イクシスプロジェクト」「海外O&G その他のプロジェクト」の3つに、再生可能エネルギー・CCS・水素等をまとめた「その他」を加えた構成です。当中間期の利益の6割超を豪州のイクシスプロジェクト一つが稼いでおり、同プロジェクトの操業安定が会社全体の収益の土台になっています。

  • 国内事業は増収でも利益が半減、「その他」は黒字転換  国内O&Gセグメントは天然ガスの販売数量が9.7%増えて売上は+67億円(+6.4%)の増収でしたが、利益は172.9億円から78.8億円へ半減しました。原価の増加が主因とされています。一方、再生可能エネルギー・電力・CCS・水素等をまとめた「その他」セグメントは、前年同期の△53.3億円の赤字から24.4億円の黒字へ転換しました。

  • 国策色の強い資本構成、政府が筆頭株主  国 (名義は経済産業大臣) が普通株の23.81%と、拒否権付きの甲種類株式1株を保有しています。当中間期には、国 (経済産業大臣名義) が保有していた子会社・南西カスピ海石油の株式49%を599.1億円で取得するという、政府との資本取引も行われました。


気をつけて見ておきたいところ

  • 増益の主因である税負担の減少が続くかどうかは不確実  今回の増益+396億円のほぼすべては、法人所得税費用が△428億円減ったことで生まれました。中間期の税費用は見積年間実効税率による暫定値であり、通期の見積りが変われば下期に修正が入ります。FY2025通期の法人所得税費用は7,438億円でしたが、今回の中間期だけで3,597.9億円です。通期でどう着地するかが、年間利益の水準を左右します。

  • 下期は大きな資金流出が重なる  未払法人所得税1,243.4億円(前期末は130.4億円)が下期に支払われる見込みです。これに自己株式取得1,400億円枠の実行と、中間配当651.4億円の支払が加わります。現在は定期預金等に7,443.8億円の流動資産を積んでいますが、これらの支払が集中する下期の資金繰りの動きは注目に値します。

  • LNG購入コミットメントの急増の中身が不明  購入契約残高が18,743.4億円から30,528.0億円へ半年で大幅に増えましたが、新規契約なのか、価格・為替前提の見直しによる膨張なのかは開示から確認できません。将来の外貨建て支払フローが増えたことは確かで、その規模は総負債と並べて把握すべき水準です。通期の有価証券報告書で詳細が開示されるかどうかが確認ポイントです。

  • カシャガン油田の係争はテールリスクとして継続監視が必要  子会社が権益7.56%を持つカシャガン油田で、オペレーターが環境関連の行政指示違反を争い、2審・カセーション審で敗訴し、強制執行手続が開始されています。会社は金銭的負担の可能性は低いと判断して引当金を計上していませんが、金額規模の開示がなく、生産操業への影響も含めて今後の注記の変化を追う必要があります。


ひとこと

今回の決算は「+17.7%増益」という数字が目を引きますが、税引前の利益はほぼ横ばいで、増益の実質的な押し上げ役は税負担の減少でした。事業の稼ぎ頭はイクシスプロジェクト一本に集中しており、国内事業は増収でも利益が半減するという対照的な結果です。下期は税支払・自己株式取得・配当が重なる資金流出の山があり、LNG購入コミットメントの急増という簿外の変化も加わって、通期の着地を見極めるうえで確認すべき点が多い半期でした。

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