株式会社SCREENホールディングス 2027年3月期 第1四半期 決算かんたん解説

2026-08-22 作成機械検算 96%

今回の決算でわかったこと

  • 売上・利益ともに前の期より減りましたが、会社が掲げる中期目標は達成圏内でした。 売上高は6,057.5億円で前期比3.1%減、営業利益は1,225.2億円で同9.7%減となりました。会社はこの減益を「成長に向けた研究開発費や人件費などの固定費の増加や売上の減少」によるものと説明しています。一方で、中期経営計画「Value Up Further 2026」の指標である営業利益率20.2% (目標19%以上)、ROIC (投じたお金からどれだけ利益を生んだかを示す割合) 20.0% (最終年度目標15%以上)、連結配当性向30.1% (目標30%以上) は、いずれも目標水準をクリアしています。

  • 手元のお金は非常に潤沢で、実質的に借金のない会社です。 現金同等物 (すぐ使えるお金) は2,257.3億円と5期連続で増えました。譲渡性預金 (銀行に預ける短期の大口預金) は300億円→600億円→800億円と3期連続で積み増しています。翌期に計画する設備投資430億円も、借入に頼らず自己資金で賄う方針が示されています。

  • 将来の売上の「予約」にあたる契約負債が2期連続で減りました。 契約負債 (装置の前受金) は1,004.0億円→831.4億円と減少しています。さらに、この有価証券報告書より新しい2027年3月期の第1四半期決算では、売上高1,217.8億円 (前年同期比-10.3%)、営業利益143.7億円 (同-41.1%) と大きく落ち込みました。それでも通期の会社予想 (売上7,430億円・営業利益1,565億円) は据え置かれており、下期に業績が集中する計画になっています。

  • 税金の支払いが一時的に膨らみましたが、これは前の期の好業績分の支払いが今期にずれ込んだものです。 法人税等の支払額は前期の246.7億円から468.4億円へと急増しましたが、貸借対照表の未払法人税等の減少と整合しており、レポートの検証でも「期ズレ」として裏付けられています。税金を払う前の営業キャッシュフローの小計は943.4億円→1,374.8億円と大幅に増えており、本業でお金を稼ぐ力そのものはむしろ強まった形です。

  • 株主への還元や資本の整理が活発でした。 自己株式344億円分の消却 (株式を消して発行数を減らすこと)、2026年4月の1:2の株式分割、配当297.2億円の支払いを実行しました。また、政策保有株式 (取引先などとの関係で持つ株) を7銘柄売却し、投資有価証券売却益31.2億円を計上しています。これは一度きりの利益であり、来期以降も続く性質のものではない点は押さえておきたいところです。

数字で見ると

  • 売上高: 前期 6,252.7億円 → 当期 6,057.5億円 (前期比3.1%減)
  • 営業利益: 前期 1,356.8億円 → 当期 1,225.2億円 (同9.7%減)
  • 経常利益: 前期 1,382.6億円 → 当期 1,243.2億円
  • 親会社株主に帰属する当期純利益: 前期 994.7億円 → 当期 920.0億円
  • 研究開発費: 317.0億円 → 377.8億円 (増加が減益要因のひとつ)
  • 営業活動によるキャッシュフロー: 前期 712.3億円 → 当期 927.1億円
  • 法人税等の支払額: 前期 △246.7億円 → 当期 △468.4億円 (前期の利益に対応する支払いのずれ込み)
  • 現金及び現金同等物の増減額: 前期 29.6億円 → 当期 271.0億円の増加
  • 現金及び預金: 1,404.0億円 → 1,473.7億円、譲渡性預金: 600億円 → 800億円
  • 契約負債 (装置の前受金): 1,004.0億円 → 831.4億円 (2期連続の減少)
  • 売掛金 (未回収の代金): 675.6億円 → 795.6億円 (減収の中での増加)
  • 純資産合計: 4,206.9億円 → 4,866.8億円、自己資本比率: 前期 62.7% → 当期 67.4%
  • 剰余金の配当: 前期 △253.4億円 → 当期 △297.2億円、自己株式の取得: 当期 △161.8億円

この会社は何で稼いでいるか

  • 柱は半導体製造装置 (SPE) 事業です。 半導体のウエハを洗う装置で世界トップシェアを持つ、京都本社の装置メーカーの持株会社です。SPEの外部売上は4,853.4億円と連結売上の大半を占め、最大の顧客は台湾のTSMC (売上に占める割合14.6%) です。当期のSPEは売上6.5%減・利益10.4%減と、業績全体の減収減益はこのセグメントの落ち込みによるものでした。

  • そのほかに3つの事業セグメントがあります。 印刷機器のグラフィックアーツ機器 (GA)、ディスプレー製造装置および成膜装置 (FT)、プリント基板関連機器 (PE) です。当期はFTが売上24.9%増・利益181.8%増と大きく伸び、有機EL向け装置の増加や売価改善が寄与しました。GAとPEは増収ながら固定費増などで減益でした。

  • 地域別では中国向けが最大です。 中国依存度は38.4% (前期42.4%) と低下しましたが、依然として最も大きい販売先地域です。一方、台湾向けは1,134億円規模から1,359億円規模へと増えています (原開示は百万円単位のため概数)。

気をつけて見ておきたいところ

  • 受注の流れが下向きに変わった可能性があります。 契約負債の2期連続減少に加え、直近の第1四半期は売上-10.3%・営業利益-41.1%と急減益でした。半導体装置は好不調の波が大きい業種であり、据え置かれた通期予想 (下期に業績が集中する計画) が実際に達成されるか、次の四半期決算で契約負債が反転して増えるかどうかが確認ポイントです。

  • 売上が減る中で売掛金が増えました。 売掛金は675.6億円→795.6億円と増加し、機械検知でも例年の変動幅を大きく超える動きとされています。期末に検収 (納品の確認) が集中しただけなのか、回収条件が長期化しているのかは現時点の開示では判別できず、翌期の残高で確かめる必要があります。中国向け売上が38.4%を占める顧客構成と併せて見ておきたい点です。

  • 在庫の評価が最大の見積り項目です。 監査人が特に注意を払った事項 (KAM) として、SPE社の製品468.0億円・仕掛品355.2億円の評価が挙げられており、連結総資産の11%を占めます。市況が想定より悪化すれば在庫の評価損が利益を直接押し下げるため、業績の波が下向きの局面では注視が必要です。

  • 固定費が増えており、売上が減ると利益が落ちやすい体質になっています。 研究開発費や人件費 (販管費の給料手当及び賞与は291.0億円→330.4億円) の増加は成長投資である一方、市況の下降局面では利益の落ち込み幅を大きくします。また、その他流動負債が346.7億円→493.7億円と大きく増えた理由は開示からは特定できず、レポートでも「検証不能」とされ翌期の開示待ちです。

ひとこと

当期は減収減益ながら、中期計画の目標はクリアし、実質無借金で手元資金が積み上がる財務の強さが際立つ決算でした。ただし前受金の減少や直近四半期の急減益など、業績の波が下向きに入った兆しを示す数字も出ています。潤沢な資金という土台の上で、下期偏重の会社計画どおりに業績が持ち直すかどうかが、次の決算の見どころです。

本記事は公表情報のみに基づく情報提供であり、投資助言ではありません。 出典: EDINET (金融庁) ほか各社公表資料。詳しくは免責事項をご覧ください。

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