任天堂株式会社 2027年3月期 第1四半期 決算かんたん解説
今回の決算でわかったこと
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新型ゲーム機の発売で、売上高がほぼ2倍になりました 2025年6月に発売された Nintendo Switch 2 の立ち上がりで、売上高は23,131億円 (前期比+98.6%) となりました。最終利益 (親会社株主に帰属する当期純利益) も4,241億円と、前期比+52.1%の大幅な増加です。ただし売上原価が3倍超に膨らんだため、売上総利益の伸びは+28.0%に留まりました。新型機の発売直後は本体の販売比率が高く、ソフトに比べて利益率が低くなりやすいという会社の説明と合っています。
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利益の伸びには「現金の裏付けがない部分」が含まれています 経常利益は5,422億円 (+45.6%) と、営業利益の伸び (+27.5%) を大きく上回りました。この差を生んだのは、ポケモン社を含む関連会社の利益の取り込み (持分法投資利益) が351億円から828億円へ増えたことと、為替差益443億円が出たことです。持分法の利益は帳簿上の取り込みであり、当期中に現金として入ってきたわけではありません。円高への転換や関連会社の業績次第で反転し得る点は、レポートの検証でも数値で確認されています。
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株式の売却で、一度きりの利益327億円が乗っています 非上場の政策保有株式1銘柄を338.3億円で売却し、326.6億円の売却益を特別利益に計上しました。売却額のほぼ全部が利益になっており、もともとの帳簿価額がごく小さかったことがわかります。会社は保有する意義が薄れた株式を順次売却して減らす方針を明記しており、その方針どおりの動きでした。ただしこの利益は今回限りで、翌期にはなくなります。
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株主への還元のしくみが大きく動いた期でした 2026年2月27日、海外での株式売出しと同じ日に、自己株式999億円の取得が決議されました。3月3〜4日に市場で買付を実行し、取得した株式は3月31日に消却済みです。配当の決め方も、連結営業利益の40% (または連結配当性向60%のいずれか高い方) に連動する方式へ変わりました。この方式では、配当はゲーム機の売れ行きの波とともに上下する設計になります。
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借金ゼロ・厚い手元資金という土台は変わっていません 社債や借入金の残高はなく、自己資本比率は77.63%です。現金及び預金は17,918億円まで積み上がりました。資金の置き場にも変化があり、3ヵ月を超える定期預金が4,103.6億円から7,754億円へ大きく増えています。有価証券での運用を縮めて預金へ資金を移した年でしたが、これが一時的な待機なのか方針の変化なのかは、開示からは読み取れません。
数字で見ると
- 売上高: 11,649億円 → 23,131億円 (+98.6%)
- 営業利益: 2,826億円 → 3,601億円 (+27.5%)
- 経常利益: 3,723億円 → 5,422億円 (+45.6%)
- 親会社株主に帰属する当期純利益: 2,788億円 → 4,241億円 (+52.1%)
- 総資産: 33,985億円 → 38,053億円
- 純資産: 27,254億円 → 29,552億円
- 自己資本比率: 80.16% → 77.63%
- 現金及び預金: 15,863億円 → 17,918億円
- 営業活動によるCF: 121億円 → 2,898億円
- 未払法人税等: 347億円 → 1,112億円
- ROE (自己資本利益率): 10.47% → 14.94%
- 1株当たり年間配当: 120円 → 219円 (中間42円+期末177円)
- 海外売上高: 1兆7,781億円 (売上高に占める比率76.9%)
- 翌期の会社予想: 売上高20,500億円・営業利益3,700億円
この会社は何で稼いでいるか
- 柱はゲーム専用機です。 本体とソフトの開発・製造を主に本社が担い、海外の販売子会社を通じて世界で販売しています。事業の区分 (セグメント) はグループ全体で一つです。当期は Switch 2 を1,986万台、旧型の Switch を380万台販売しました。Switch 2 向けソフトは4,871万本で、ゲーム専用機の売上は前期比+106.7%と伸びています。
- キャラクターなどの知的財産を使う事業も持っています。 映画やモバイルアプリなどの「IP関連収入等」は735億円で、映画関連の売上が減ったため前期比-9.7%でした。ただし翌期の第1四半期には、新作映画の効果で348億円 (前年同期比+107.4%) へ倍増しています。
- 販売の主戦場は海外です。 海外売上比率は76.9%に達します。ダウンロード販売などのデジタル売上高も4,076億円 (+25.0%) と伸びました。
気をつけて見ておきたいところ
- 翌期は税金の支払いが集中します。 未払法人税等が347億円から1,112億円へ急増しました。当期の利益が大きかった分、納税は翌期に現金で出ていきます。翌期の営業キャッシュフローが弱く見えても、それだけで本業の悪化と読まないための調整点です。
- 一時的な追い風がいくつも重なった利益です。 為替差益443億円、株式の売却益327億円、持分法投資利益の急増は、いずれも来期も同じ規模で続くとは限りません。保有株式の値下がりで、その他有価証券評価差額金も+373億円から△147億円へマイナスに転じました。経常利益や純利益を「毎年出せる実力」と読まないための注意点です。
- 部材コストと関税が翌期の原価を左右します。 会社は翌期の予想に、メモリを中心とする部材価格の高騰や関税の支払いによる原価への影響として約1,000億円を織り込んでいます。また翌期第1四半期の高い粗利率には、米国の関税 (IEEPA関税) の還付約3億USドルという一度きりの押し上げが含まれており、この水準が続く前提では読めません。
- 貸借対照表に出ない負担が増えました。 子会社 NES Merchandising, Inc. の不動産賃借料に対する支払保証が12.1億円から100.5億円へ急増しています。金額は会社の規模に比べれば小さいものの、背景の説明が開示にないため、翌期の残高の動きを確認したい点です。
ひとこと
新型機の発売で売上がほぼ倍になり、借金ゼロ・厚い手元資金という財務の土台も揺らいでいません。一方で、当期の利益には為替差益や株式売却益など一時的な要素が重なっており、額面どおりに毎年の実力とは読めない中身でした。翌期は納税の集中と部材コストの上昇が確定している分、営業キャッシュフローと粗利率の推移を落ち着いて確認していくのがよさそうです。
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