株式会社アシックス 2026年12月期 第2四半期 決算かんたん解説

2026-08-16 作成機械検算 95%

今回の決算でわかったこと

  • 4期連続で過去最高を更新し、中期計画の目標を1年前倒しで達成しました。 アシックスの2025年12月期は、売上高8,109.2億円(前期比+19.5%)、営業利益1,425.2億円(+42.4%)、親会社株主に帰属する当期純利益987.2億円(+54.7%)と、大幅な増収増益でした。会社が掲げていた中期経営計画2026の修正後目標(営業利益1,300億円以上・営業利益率17.0%以上・ROA15%前後)を、予定より1年早くクリアしたことになります。

  • 利益の中身(質)は前期より良くなっています。 前期には政策保有株式(取引先などとの関係維持のために持つ株)をすべて売却したことによる一時的な売却益69.4億円がありましたが、当期はそれがゼロになったうえでの大幅増益です。特別利益も71.7億円から23.1億円へ縮小しており、一時的な利益に頼らず本業で稼いだことが数字で確認できます。有価証券報告書には「政策保有株式(上場株式)は全て売却しております。また今後は政策保有株式を保有しない方針です」と明記されています。

  • 稼いだお金は株主への還元と借金の返済に回り、実質無借金の体質が進みました。 本業で稼いだ現金(営業キャッシュフロー)1,099.1億円を、自己株式の取得500.0億円、社債の償還250億円、配当157.3億円、リースの返済149.8億円に充てています。その結果、現金は147.5億円減りましたが、社債残高は350億円から100億円(1年内に償還する250億円を除く)へ減り、長期借入はゼロになりました。

  • 一方で、為替関連の「見えにくい変化」がありました。 為替予約(将来の為替レートをあらかじめ約束しておく取引)の評価益である「繰延ヘッジ損益」が125.3億円から8.7億円へほぼ消滅し、海外子会社の純資産を円に換算する際の差額である「為替換算調整勘定」は292.2億円から447.0億円へ膨らみました。会社の利益や純資産が、以前より為替の動きに影響されやすい状態になっていると読めます。

  • 決算書の対象期間より後に、大きな発表が続いています。 2026年8月14日の中間決算で、2026年12月期の通期予想を売上高10,500億円・営業利益1,950億円へ上方修正し、年間配当予想を44円へ増配しました。あわせて、子会社アシックス商事の解散・清算方針(特別損失70億円を計上)と、オニツカタイガーの分社化(2027年1月)も公表されています。

数字で見ると

  • 売上高: 6,785.3億円 → 8,109.2億円 (+19.5%)
  • 営業利益: 1,001.1億円 → 1,425.2億円 (+42.4%)
  • 親会社株主に帰属する当期純利益: 638.1億円 → 987.2億円 (+54.7%)
  • 営業活動によるキャッシュフロー: 1,046.1億円 → 1,099.1億円
  • 現金及び預金: 1,270.2億円 → 1,122.7億円
  • 商品及び製品(在庫): 1,339.2億円 → 1,743.7億円 (+30.2%)
  • 社債(固定負債): 350億円 → 100億円 (別に1年内償還予定の社債250億円)
  • 自己株式の取得: 前期350.1億円 → 当期500.0億円
  • 年間配当: 20円 → 28円 (2026年12月期は44円へ増配予想)
  • 繰延ヘッジ損益: 125.3億円 → 8.7億円 (-93.0%)
  • 為替換算調整勘定: 292.2億円 → 447.0億円 (+53.0%)
  • 未払法人税等: 117.0億円 → 269.9億円 (+130.6%)
  • 自己資本比率: 46.3% (前期44.9%から改善)

この会社は何で稼いでいるか

  • 中心はスポーツシューズの製造販売です。 アシックス本体(グローバル本社)と子会社63社で構成され、スポーツシューズを中心とするスポーツ用品の製造販売のほか、ランニングイベントの登録・運営事業(ランニングサービス)も手がけています。商品カテゴリーでは、収益の柱がパフォーマンスランニング(売上3,635.4億円)で、スポーツスタイル(1,413.2億円)とオニツカタイガー(1,365.2億円)が高成長の牽引役として初めて1,000億円台に乗りました。

  • 地域別では欧州と日本が大きな柱です。 セグメントは地域別の7区分で、当期は欧州地域2,258.0億円(+25.9%)、日本地域2,042.4億円(+22.7%)、北米地域1,411.9億円(+4.6%)、中華圏地域1,205.1億円(+19.9%)など。日本の伸びにはインバウンド売上+84%が寄与しました。営業利益ではすべての地域が増益で、特に日本(+61.7%)の伸びが目立ちます。

  • 製品の仕入は大部分が米ドル建てです。 このため為替のリスク管理が財務運営の中核テーマとなっており、為替予約契約の残高は前期の約3,300億円規模から約5,300億円規模へ拡大しています。

気をつけて見ておきたいところ

  • 為替予約の評価益のクッションがほぼなくなりました。 繰延ヘッジ損益は125.3億円から8.7億円へ縮小しています。前期まで積み上がっていた為替予約の評価益がほぼ消えた状態のため、今後円高に振れた場合、仕入コスト面の防御が以前より薄い点は増益の持続性のリスク要因です(なお2026年中間期には+86億円まで回復したとの開示があります)。

  • 海外子会社の純資産の為替は、開示のうえではヘッジ(保険的な手当て)がされていません。 為替換算調整勘定447.0億円は純資産2,733.6億円のかなりの部分を占め、円高局面では純資産と自己資本比率46.3%を押し下げる要因になります。為替予約は売上・仕入の手当てに限られ、海外子会社への投資そのものを守る取引は開示にありません。

  • 税金の支払いが増える局面に入っています。 未払法人税等は269.9億円(+130.6%)まで増えており、これは翌期上半期の営業キャッシュフローを押し下げる要因になります。過去の繰越欠損金(税務上の赤字の持ち越し)の効果がなくなったことと国内収益の急拡大が背景で、好業績の裏返しではありますが、現金の流れを見るうえでは織り込んでおきたい点です。

  • ランニングサービス事業ののれん57.2億円は監査上も注目されています。 同事業(レース登録・施設運営など)は増収で赤字幅は縮小したものの営業損失が続いており、買収時に計上したのれん(57.2億円)の減損の兆候があるかどうかが、監査上の主要な検討事項(KAM)に指定されています。「一定の売上成長が継続する前提」の事業計画が達成できるかが今後の確認点です。

ひとこと

一時的な利益に頼らず本業で過去最高益を更新し、稼いだ現金で株主還元と借金圧縮を進めた、中身の伴う決算だったと読めます。一方で、為替の評価益クッションの消滅や海外純資産の換算差額の拡大など、為替への感応度が高まっている点は要注意です。次の中期経営計画は2026年第4四半期に発表予定とされており、増えた資金力をどこへ投じるのかが次の注目点になります。

本記事は公表情報のみに基づく情報提供であり、投資助言ではありません。 出典: EDINET (金融庁) ほか各社公表資料。詳しくは免責事項をご覧ください。

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