ヤンマーホールディングス株式会社 決算かんたん解説

2026-08-26 作成機械検算 41%

今回の決算でわかったこと

  • 売上も利益も大きく伸びたが、増益の中心は本業の外にある 売上高は1兆2,220億円で、前の期から13.2%増えました。経常利益は587億円で、伸び率は43.2%に達します。ただし本業のもうけを示す営業利益は約472億円規模で、伸びは+9.7%にとどまりました。この差を生んだのは、為替の損が益へ反転したことと、トルコ子会社などに適用する物価急騰国向けの会計修正 (超インフレ会計) で生じた利得です。

  • 純利益は2.2倍だが、税引前の利益はほぼ横ばい 親会社株主に帰属する当期純利益は108億円から242億円へ増えました。ところが税金を引く前の利益は380億円から379億円と、ほとんど変わっていません。純利益が跳ねたのは、税金費用の計上時期の調整 (法人税等調整額) が当期は利益側へ振れたためです。実際に発生した税金は前期の約139億円規模から当期は約252億円規模へむしろ増えており、税負担が消えたわけではありません。

  • 米国と欧州で損失処理が相次いだ 米国のボートシェア事業を譲渡し、80.1億円の損失を計上しました。米国子会社では、買収時に上乗せして払った分 (のれん) の全額・約25億円規模を減損しています。ドイツでは工場閉鎖の費用を計上し、持株会社単体では欧州子会社向けの債務保証損失引当金が275.4億円へほぼ倍増しました。なお、のれんは残り約205億円規模あり、全額が産業用機械の事業に属します。

  • 借金の中身が短期にシフトした 当期は短期の市場調達であるCP (コマーシャル・ペーパー) の発行で460億円を調達しました。一方で長期借入は返済が新規を上回り、社債は残り2本が全額1年以内の償還区分になりました。増収で売掛金や在庫が膨らんだため、営業キャッシュ・フローは351億円とほぼ横ばいです。手元の現金及び現金同等物は932億円あり、加えて借入の未使用枠が2,724.8億円確保されているので、資金繰りの余裕そのものは厚い状態です。

  • 品質関連の費用を積み、会社自身が翌期の変動可能性を明記した 製品の無償修理などに備えるお金 (製品保証引当金) は173.4億円へ積み増されました。製品や部品の不具合に対応する市場対策費・約32億円規模も特別損失に計上しています。会社は注記で、見積りと実際の発生が異なれば翌期に重要な影響を与える可能性があると明記しました。会社自らが翌期の振れをことわった点は重く受け止める必要があります。

数字で見ると

  • 売上高: 前期1兆796億円 → 当期1兆2,220億円 (前期比+13.2%)
  • 営業利益: 約472億円規模 (前期比+9.7%)
  • 経常利益: 前期410億円 → 当期587億円 (+43.2%)
  • 売上高経常利益率: 3.8% → 4.8%
  • 税金等調整前当期純利益: 前期380億円 → 当期379億円
  • 親会社株主に帰属する当期純利益: 前期108億円 → 当期242億円 (+124.1%)
  • 海外売上高: 前期6,416億円 → 当期7,296億円 (+13.7%)。海外比率は59.7%
  • 資産合計: 1兆2,251億円。純資産合計: 4,073億円
  • 自己資本比率: 31.5% (前期31.6%)
  • 有利子負債: 4,360億円
  • うち短期借入金1,749億円、長期借入金 (固定負債) 1,151億円
  • 営業活動によるキャッシュ・フロー: 前期346億円 → 当期351億円
  • 投資活動によるキャッシュ・フロー: 前期△632億円 → 当期△452億円
  • 財務活動によるキャッシュ・フロー: 前期△412億円 → 当期+221億円
  • 現金及び現金同等物: 932億円 (期首比+171億円)
  • コミットメントライン等の未実行枠: 2,724.8億円
  • 自己資本利益率 (ROE): 前期3.0% → 当期6.6%
  • 普通株式の1株配当: 前期1,425.82円 → 当期1,889.21円 (配当性向は18.9%→11.0%)
  • 翌期の会社予想 (売上): 1兆2,930億円 (+5.8%)
  • 翌期の会社予想 (利益): 経常利益550億円 (△6.4%)、純利益360億円 (+48.2%)

この会社は何で稼いでいるか

  • 産業用機械事業 — 農機・建機・発電機など 農業機械、建設機械、ガスヒートポンプ、常用非常用発電機を手がけます。当期は国内の農業機械が、米価上昇による農家の更新意欲で大きく伸びました。発電機はデータセンター需要で増収です。外部売上は約7,387億円規模、利益は約206億円規模でした。

  • 内燃機関及び関連機器事業 — エンジンと部品 産業用・舶用のエンジンや、トランスミッションなどの部品を扱います。船のエンジンの入れ替え・メンテナンス需要や、北米での部品販売の増加が追い風でした。利益は約155億円規模から約248億円規模へ伸び、当期の増益をけん引しています。

  • 海外が6割 海外売上高の比率は59.7%で、欧州・米国・アジアに製造販売の子会社を広く持ちます。そのぶん、業績は為替の動きに左右されやすい体質です。当期の損益も、前期の為替差損 (約59億円規模) から当期の為替差益 (約38億円規模) へと大きく振れました。

気をつけて見ておきたいところ

  • 翌期は経常減益の会社予想 会社は翌期を増収 (+5.8%) としつつ、経常利益は6.4%の減益と見込んでいます。当期の増益に一過性の要素が含まれることを、会社自身が織り込んでいると読めます。また翌期の純利益予想360億円の達成は、税金費用の振れが元に戻るかどうかにも左右されます。当期の経常587億円をそのままの実力とみなさないほうが安全です。

  • 品質関連費用の追加計上がないか 製品保証引当金173.4億円について、会社は翌期に重要な影響が及ぶ可能性を注記で明記しました。引当は帳簿上の費用ですが、実際の修理支出は今後の現金の流出になります。残高が減少に転じるか、市場対策費の再計上がないかが次の確認点です。

  • 欧州子会社を親会社が支えている 持株会社単体の債務保証損失引当金は275.4億円で、欧州の2社向けが大半を占めます。海外子会社の借入への保証は単体で合計1,862.0億円あります。連結の表面には出にくい親会社の負担なので、残高が戻るのか追加で積まれるのかを追う必要があります。

  • 調達の短期化と為替の影響 社債の残りは全額1年以内の償還で、CPと短期借入への依存が増えました。借り換えを続けられることが資金繰りの前提になります。また自己資本比率31.5%は円安の追い風込みの数字で、在外子会社への出資分に為替の備えをした記載は開示にありません。円高へ振れると自己資本が直接目減りします。

ひとこと

売上・利益とも数字は好調でしたが、増益の中心は為替と会計上の利得にあり、会社自身も翌期の経常減益を予想しています。一方で手元資金と未使用の借入枠は厚く、資金繰りの余裕は確認できました。翌期は、品質関連費用と欧州向け引当の行方、そして本業の利益がどこまで積み上がるかが読みどころです。

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