メガバンク横断2026年Q1
- 株式会社みずほフィナンシャルグループ — 機械照合率 88%
- 株式会社三井住友フィナンシャルグループ — 機械照合率 94%
- 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ — 機械照合率 84%
3メガバンク横断比較レポート — FY2026有価証券報告書 (2026年3月期)
対象: みずほフィナンシャルグループ (S100YF8Y) / 三井住友フィナンシャルグループ (S100YERK) / 三菱UFJフィナンシャル・グループ (S100YJQO)
エグゼクティブサマリー
3行とも「金利がある世界」で3割超の大幅増益 (親会社株主純利益: みずほ12,486億円 +41.0%、SMFG 15,830億円 +34.4%、MUFG 24,272億円 +30.3%) だが、円債デュレーション (金利リスクを取る年限) の置き方が3方向に完全に割れたのが最大の分岐である。みずほは円債を1年以内へ超短期化しつつ満期保有の外債10年超でリスクを取るバーベル型、SMFGは満期保有勘定 (含み損益を純資産に出さない償却原価区分) で5〜10年の国債を新規に大量取得、MUFGは同じく満期保有で7〜10年国債を積み増した。ただし増益の裏面で、満期保有の含み損 (MUFG △1,119,329百万円、SMFG △178,649百万円、みずほ外債△148,831百万円) と繰延ヘッジ損益の悪化 (みずほ-8,552億円、MUFG -12,628億円) が3行共通に進行しており、経済価値ベースのリスクは増えている。
情報源の状況
| 会社 | 一次情報 | 粒度 |
|---|---|---|
| みずほ | EDINET有報 (FY2026)、機械抽出差分・満期構成・金利ショック試算、2027/3期Q1短信 | 数値詳細。個別分析の確定知見あり |
| SMFG | 同上 | 数値詳細。個別分析の確定知見あり |
| MUFG | 同上 | 数値詳細。個別分析の確定知見あり |
3社とも情報の非対称は小さく、有報の注記レベルまで比較可能。ただし横並びの限界が3点ある。
- セグメント区分が3行で異なる (みずほ: 顧客セグメント別カンパニー制、SMFG: 事業部門制、MUFG: 事業本部制)。さらにみずほQ1短信は「海外収益を予算為替レートで換算し前年同期も組替」「2026年4月から経費配賦方法を変更し前年同期を組替」と注記しており [みずほ/Q1短信 セグメント情報注記]、MUFG Q1も「事業本部間の配賦方法を変更、前年同期は変更後基準」と注記 [MUFG/Q1短信 セグメント情報注記]。セグメント前年比は各社の調整済み基準であり、有報本表と単純に引き算できない。
- 市場リスクの開示VaRは前提が違う (みずほ: 片側99%・保有1ヵ月、SMFG: 99%・保有1日/1年、かつ当期に計算方法見直しあり)。VaRの水準を3行で横並びしない。
- Q1短信 (2026年4〜6月) は対象有報 (2026年3月期) より後の期間であり、本文では「その後の動向」として区別する。
共通トレンド
- 円金利上昇の恩恵で本業増益: 3行とも資金運用収支が増加 (詳細はテーマ1)。Q1短信でも経常増益が継続 (みずほ+62.5%、SMFG+43.4%、MUFG+57.8%) [各社/決算短信・ガイダンス対比]。
- 日銀バランスの巻き戻し: 現金預け金の圧縮 (みずほ-109,153億円、MUFG -190,499億円、SMFG -18,937億円) [各社/機械抽出差分]。ただし経路は分かれる — MUFGは借用金 (日銀オペ含む) を-127,420億円圧縮、SMFGも-19,842億円圧縮した一方、みずほは借用金が+10,896億円と逆に増加しており、みずほの巻き戻しは預け金→短期国債シフトが主経路 [各社/機械抽出差分]。
- 満期保有勘定の再活用: 3行とも「評価損を純資産 (OCI) に出さずに金利リスクを取る」意思決定を実行。いずれも保有目的の区分変更 (振替) はなく新規取得 [各社/有報 注記: 有価証券関係]。
- 株で益出し・国債で損出しの両建て売却: 3行とも同一年度に実行 (テーマ2・3)。
- 特定取引勘定の膨張: 特定取引資産はみずほ+82,371億円、SMFG+47,255億円、MUFG+138,524億円 [各社/機械抽出差分]。SMFG・MUFGではデリバティブ時価のグロスアップ (資産・負債両建ての膨張) が主因と確定しており、資金繰り悪化のシグナルではない [SMFG/確定知見 仮説4] [MUFG/確定知見 H6]。
- 株主還元の拡大: 自己株取得はみずほ4,043.2億円 (前期1,029億円)・MUFG 5,001億円 (前期4,184億円) で、両社とも後発事象で1,000億円上限の追加取得を決議。SMFGは自己株取得2,506億円と前期 (2,516億円) 並みだが、配当は122円→157円へ増配 [各社/機械抽出差分・数値ファクト・注記: 重要な後発事象]。
各社の分岐
分岐1: 円債デュレーションの3方向分岐 — 超短期 (みずほ) / 中期5-10年 (SMFG) / 7-10年 (MUFG)
- 事実: みずほのその他有価証券 (AFS: 時価評価し評価差額を純資産に直入する区分) の国債は1年以内バケットに12,047,110百万円 (前期6,160,251百万円) が集中し、加重平均残存は機械推定1.2年・10年超比率0% [みずほ/満期構成・注記: 金融商品関係(注4)]。SMFGは満期保有目的の国債が109,550百万円→4,420,557百万円へ急増し、償還予定額ベースで5年超10年以内バケットが+40,987億円 [SMFG/有報 注記: 有価証券関係・満期構成]。MUFGは満期保有の7年超10年以内が+23,177億円 (うち国債の同バケット60,683億円)、一方AFS国債は1年以内に114,325億円が集中 (残存推定1.6年) [MUFG/満期構成]。
- 仮説: 円金利観の違いというより「どの勘定でどの年限のリスクを取るか」の会計戦略の違い。みずほは時価勘定では金利リスクを取らず (AFS国債10年超はほぼゼロ)、SMFG・MUFGは償却原価勘定に中長期JGBを固定化して評価損の資本直撃を回避しつつキャリーを確保。【確度: 高 — 各社の確定知見で支持判定済み】
分岐2: 外貨ヘッジ — 通貨スワップを積むMUFG・みずほ vs 圧縮するSMFG
- 事実: ヘッジ会計適用の通貨スワップ契約額は、MUFGが14,427,572百万円→35,307,136百万円 (約2.4倍)、みずほが8,658,470百万円→10,930,006百万円 (1年超は1,911,681→4,716,775百万円と長期化) [MUFG/有報 注記: デリバティブ取引関係2(2)] [みずほ/有報 注記: デリバティブ取引関係2(2)]。対照的にSMFGは13,883,447百万円→11,938,890百万円へ減少 (ただし1年超は8,995,914→9,481,859百万円へ増加) [SMFG/有報 注記: デリバティブ取引関係]。SMFGは海外預金平均残高が36,487,334百万円→42,831,100百万円へ拡大しており、外貨調達の現地化が併走 [SMFG/有報 注記: MD&A]。
- 仮説: MUFGは外債のヘッジ付き化+借用金圧縮に伴う外貨調達構造の転換 (その他の支払利息5,948→8,770億円とヘッジコスト増加が整合) [MUFG/確定知見 H3・支持]。SMFGは預金等のナチュラルファンディングで通貨スワップ依存を下げた可能性があるが、トレーディング区分の通貨スワップ増加との切り分けは開示からできない [SMFG/確定知見 仮説5・一部支持]。【確度: MUFG高 / SMFG中】
分岐3: 信用サイクルの位置 — 海外悪化が顕在化したSMFG、改善と斑のMUFG、転換点シグナルのみずほ
- 事実: SMFGは不良債権比率0.67%→0.97%へ上昇し、増加は海外 (中南米・北米) に集中 (海外店分の開示債権2,708→5,915億円、国内は+621億円) [SMFG/確定知見 エグゼクティブサマリー・仮説7]。MUFGは不良債権比率1.11%→0.96%へ改善する一方、米州の開示債権は+816億円悪化し、与信関係費用3,558億円は前期の戻入剥落+個別引当2,023億円計上の反動 [MUFG/確定知見 H8]。みずほは直接減額96,218→334,727百万円、フォワードルッキング引当 (将来予測に基づく予防的引当) 107,440→162,156百万円と、大口処理と予防的積み増しが同時進行 [みずほ/確定知見 H9]。
- 仮説: 3行とも国内与信は良好で、与信サイクルの重心は海外 (特に米州・新興国) へ移行。SMFGが顕在化フェーズの先頭、MUFGは正常化フェーズ、みずほは転換点の入口。【確度: 中 — 方向は開示で確認できるが翌期の増勢は未確定】
必須テーマ1: 「金利がある世界」の本業収益 — 恩恵の出方が違う
結論から言うと、円金利上昇の「レート効果」を最も直接的に取り込んだのはみずほで、SMFG・MUFGは残高成長が主導している。
| 項目 | みずほ | SMFG | MUFG |
|---|---|---|---|
| 資金運用収支 (連結・開示値) | 資金利益 10,452億円→13,770億円 (+3,318億円) [みずほ/MD&A図表1] | 前期比 +3,814億円 [SMFG/MD&A] | 28,765億円→30,062億円 (+1,296億円) [MUFG/MD&A] |
| 機械分解: 残高要因 | +3,599億円 [みずほ/比率分解] | +4,048億円 [SMFG/比率分解] | +8,621億円 [MUFG/比率分解] |
| 機械分解: 利回り要因 | △4,797億円 [みずほ/比率分解] | △1,026億円 [SMFG/比率分解] | △5,499億円 [MUFG/比率分解] |
| 貸出金 (期末) | 941,088億円→997,532億円 | 1,111,362億円→1,176,292億円 | 1,214,361億円→1,337,995億円 |
| 預金 (期末) | 1,587,468億円→1,659,371億円 | 1,714,987億円→1,856,742億円 | 2,285,127億円→2,394,392億円 |
(貸出金・預金は各社/機械抽出差分。機械分解の「利回り要因マイナス」は海外の利回り低下が混在した連結値である点に注意)
- みずほ: 国内の貸出金利回り1.26%→1.54%、預け金利回り0.27%→0.59%、有価証券利回り1.92%→2.20%に対し、預金コストは0.14%→0.28%にとどまり、国内資金運用収支は616,457百万円→813,256百万円へ増加 [みずほ/有報 注記: MD&A(2)①]。連結の利回り要因マイナスは海外の運用・調達双方の利回り低下が混在したもので、国内レート効果が増益主導と確定している [みずほ/確定知見 H7・支持]。ただし国内預金利息は172,942→348,743百万円とほぼ倍増しており、預金コスト上昇との競争が既に始まっている。
- SMFG: 機械分解は残高要因+4,048億円が主因 [SMFG/比率分解]。預金増+141,756億円は3行で最大であり、調達構造は借用金圧縮 (-19,842億円)+預金・TLAC社債シフト (劣後社債3,153,557→3,980,778百万円) [SMFG/確定知見 仮説3]。
- MUFG: 国内は運用利回り1.75%→2.08%・調達0.77%→1.05%とスプレッドが拡大、海外は運用利回り5.75%→4.97%へ低下も残高増で収支は増加 [MUFG/MD&A]。貸出金+123,634億円 (+10.2%) と残高成長が3行最大 [MUFG/機械抽出差分]。ただしゼロコスト近傍の日銀調達 (借用金) から預金・社債への恒久シフトが進み、調達コストは上昇方向 [MUFG/確定知見 H4]。
利益の質の注意点 (3行共通): 増益のすべてが本業ではない。みずほは特別利益938.4億円に退職給付信託返還益等の一過性を含み、株式等関係損益3,251億円 (前期比+1,839億円) が経常増益の約半分 [みずほ/確定知見]。SMFGは持分法投資損益+1,432億円が前期の減損剥落という一過性 [SMFG/確定知見]。MUFGは前期の債券組替え損の反動 (その他業務収支+8,205億円) が増益の主因の一つ [MUFG/確定知見]。翌期の増益持続性は資金利益側にかかるという構図は3行共通である。
含意: 円金利がさらに上がる局面で最もPLが素直に伸びるのはみずほ (国内レート感応度が高い) だが、同時に繰延ヘッジ損失も拡大する非対称構造 (テーマ2) を抱える。営業トークでは「増益=リスク削減」ではない点を外さないこと。
必須テーマ2: 債券ポートフォリオの含み損益 — 同じ「両建て売却」、違う「リスクの置き場」
(1) 売却損益: 3行とも「株で益出し・国債で損出し」
| 売却損益 (AFS・百万円) | みずほ | SMFG | MUFG |
|---|---|---|---|
| 株式: 売却益 / 売却損 | 395,831 / 18,951 | 389,093 / 1,054 | (種類別の株式単独開示は確定知見に記載なし) |
| 国債: 売却益 / 売却損 | 24,267 / 82,511 | 3,035 / 32,799 | 25,739 / 299,621 |
| 外債等: 売却益 / 売却損 | ― | その他 185,112 / 117,843 | 外国債券 198,447 / 76,955 |
(出典: [みずほ/有報 注記: 有価証券関係5] [SMFG/有報 注記: 有価証券関係] [MUFG/有報 注記: 有価証券関係4])
- 国債の損出し (低クーポン債の損切り) 規模はMUFGが突出 (売却損299,621百万円、国債売却額は20.9兆円→34.4兆円へ拡大) し、かつ損出しは「現在進行形」 [MUFG/確定知見 H1]。
- 外債の扱いが分かれる: MUFGは前期「益76,835/損905,590」→当期「益198,447/損76,955」と損出しから益出しへ転換 (組替え完了フェーズ) [MUFG/有報 注記: 有価証券関係4]。SMFGはグロス両建て (益185,112/損117,843) の入替局面 [SMFG/有報 注記: 有価証券関係]。みずほの外債は売却より満期保有での積み増しが主 (後述)。
(2) 含み損とリスク量: 満期保有勘定に「見えない含み損」が積まれた
| 項目 | みずほ | SMFG | MUFG |
|---|---|---|---|
| 満期保有の含み損 (時価差額) | 外債 △148,831百万円 [注記: 有価証券関係2] | △178,649百万円 (うち国債△173,946百万円) [注記: 有価証券関係] | △1,119,329百万円 (うち国債△704,290百万円) [注記: 有価証券関係2] |
| +100bp推定損失 (機械推定・償還予定額ベース) | 15,900億円 = 純資産の13.9% | 17,812億円 = 純資産の11.2% | 46,918億円 = 純資産の19.8% |
| 同・前期比リスク量 | △287億円 (減少) | +3,196億円 (増加) | +4,365億円 (増加) |
| 繰延ヘッジ損益 (期末) | -4,652億円→-8,552億円 | -1,686億円→-3,007億円 | -8,942億円→-12,628億円 |
(+100bp試算は各社/金利ショック試算。機械推定であり、バケット中点近似・ヘッジ効果/コンベクシティ非考慮・償還予定額ベースの前提。繰延ヘッジは各社/機械抽出差分)
3つの重要な読み方の注意がある。
- みずほの「機械試算はリスク減」を営業トークに使ってはならない。会社開示のバンキングVaR (片側99%・保有1ヵ月) は年度末2,004億円→3,001億円へ増加しており、開示値を優先すると実態はリスク量増加である [みずほ/有報 注記: 金融商品関係⑤] [みずほ/確定知見 H6・支持]。機械試算はデリバティブ (受固定スワップ拡大) と満期保有外債の区分横断リスクを捉えない。
- MUFGの機械推定19.8%は3行で最大だが、外債部分は外貨金利ショックであり円金利の話と混ぜないこと。また満期保有・AFSともヘッジ会計適用の金利スワップ (受変動・支固定、MUFGは9.5兆→25.8兆円、SMFGは24,175,237→27,588,966百万円へ増加) で経済リスクの一部は相殺されている [MUFG/確定知見 H3] [SMFG/確定知見 仮説6]。
- 繰延ヘッジ損失の拡大はPL増益の裏面。みずほではヘッジ会計適用の受固定スワップ時価が△407,320→△805,341百万円へ悪化し、悪化の主因は金利側と確定 [みずほ/確定知見 H4]。円金利が上がるほど資金利益 (プラス) と繰延ヘッジ損失 (マイナス) が同時に拡大する非対称構造は、みずほ・MUFGで特に顕著。
(3) 総合判定 — 3行の債券運営の意図
- みずほ: 円債は超短期ロール (AFS 1年以内国債12,047,110百万円) でデュレーションを取らず、満期保有の外債10年超 (43,888億円・含み損△148,831百万円) とALM受固定スワップでリスクを取るバーベル型。円金利上昇警戒が最も強い。
- SMFG: AFS国債を半減 (11,180,546→5,476,427百万円) させた上で、満期保有の5-10年国債を新規取得。**「時価勘定を軽くし、償却原価で中期キャリーを固定」**する運営。取得直後から含み損△178,649百万円が発生している点は経済価値ベースの最大の論点。
- MUFG: 損出し (国債) と益出し転換 (外債) で組替えを完了させつつ、満期保有7-10年JGB+10年超外債・証券化商品で二層構造 (満期保有=buy & hold、AFS=超短期ロール) を確立。満期保有含み損△1,119,329百万円と3行最大の「見えない含み損」を抱える。
必須テーマ3: 政策保有株式の削減進捗 — 「簿価は減るが時価残高は減らない」
政策保有株式 (取引関係の維持を目的に保有する株式) の3行対比。区分 (売却の進捗) と経済実態 (BS上の残高) を分けて見ることが重要である。
| 項目 (最大保有会社=中核銀行ベース) | みずほ | SMFG | MUFG |
|---|---|---|---|
| 上場株BS計上額 (前期→当期) | 23,855億円→27,948億円 | 31,729億円→34,576億円 | 34,594億円→37,718億円 |
| 上場株の売却価額 (前期→当期) | 3,132億円→3,776億円 | 6,781億円→5,668億円 | 9,033億円→5,316億円 |
| 売却/減少銘柄数 (当期) | 190銘柄 [みずほ/数値ファクト] | (確定知見に記載なし) | 282銘柄減少・増加は1銘柄 [MUFG/数値ファクト] |
(BS計上額・売却価額は各社/時系列・機械抽出差分)
- 区分 (フロー) の評価: 売却は3行とも継続しているが、ペースの方向が違う。みずほは売却価額が前期比で増加 (加速)、SMFG・MUFGは減速。特にMUFGは9,033→5,316億円へ大きく減速したが、282銘柄で減少・増加は1銘柄のみと、銘柄ベースの削減方針自体は堅持 [MUFG/確定知見 H7]。SMFGの会社記載の当期削減額は約1,240億円 (取得原価ベース) であり、売却価額5,668億円とはベースが異なる別の数値である点に注意 [SMFG/有報 注記: MD&A]。
- 経済実態 (ストック) の評価: 3行ともBS計上額は増加している。これは売却の停滞ではなく株価上昇による時価の膨張で、みずほでは株式取得原価の減少 (768,268→689,397百万円) と売却190銘柄から時価膨張と読むのが整合的と確定している [みずほ/確定知見 H2]。MUFGの株式含み益は2,825,170百万円と巨額で、益出し余力は依然厚い [MUFG/有報 注記: 有価証券関係3]。
- 各社の個性: みずほは非上場株式を取得価額合計924.6億円新規取得しており「縮減一辺倒ではない」 [みずほ/数値ファクト]。SMFGの株式売却益にはKotak Mahindra Bank株など政策株ではなく海外出資先整理が含まれる (「株式等売却益5,211億円」と「AFS株式の売却益389,093百万円」はスコープが異なる別数値) [SMFG/確定知見 仮説2]。MUFGはTRS (トータル・リターン・スワップ) によるヘッジを376,976→443,986百万円へ拡大し、売らずにリスクを落とす手段を併用 [MUFG/有報 注記: デリバティブ取引関係2(3)]。
- 株価感応度: みずほの政策保有株式感応度 (TOPIX1%) は212→274億円へ増加しており [みずほ/有報 注記: 金融商品関係]、株価依存の利益反転リスクは残高増とともに大きくなっている。
必須テーマ4: セグメント別貢献と与信費用・不良債権 — 与信サイクルの現在地
セグメント (市場部門の貢献が3行とも急伸 — Q1はその後の動向)
セグメント区分・調整基準が3行で異なるため水準の横並びはせず、各社内の変化のみ記す。**Q1数値は対象有報より後の期間 (2026年4-6月) の「その後の動向」**である。
- みずほ: 有報期ではGMC (グローバルマーケッツ) の業務粗利益が+1,562億円 [みずほ/MD&A図表3]。Q1ではGMCの業務純益が73,458→199,661百万円へ急伸し、RBC (リテール・事業法人) も37,833→82,219百万円と伸長 [みずほ/Q1短信 セグメント情報。前年比は予算為替レート・経費配賦変更後の組替基準]。5カンパニーのうちAMCのみ粗利益が17,465→15,501百万円と減少している。
- SMFG: Q1で市場事業部門の連結業務純益が114,900→178,900百万円、ホールセール219,300→271,500百万円、リテール74,500→120,900百万円と全部門増益。グローバル事業部門のみ184,700→151,200百万円と減益 [SMFG/Q1短信 セグメント情報] — 海外与信費用 (後述) との整合が疑われる。
- MUFG: 有報期に市場事業本部の営業純益が△6,579億円→△355億円 (+6,224億円改善) と、前期の債券組替え損の反動が最大の変化 [MUFG/確定知見 H1]。Q1では市場事業本部80,913→148,641百万円、顧客部門小計534,016→739,776百万円と全面増益 [MUFG/Q1短信 セグメント情報。配賦方法変更後の基準]。持分法投資損益はQ1で157,954→261,564百万円 (Morgan Stanley寄与) と依存度が高い。
与信費用・不良債権 — 「国内良化・海外悪化」の共通構図の中でフェーズが違う
- SMFG (顕在化フェーズ): 不良債権比率0.67%→0.97%へ上昇。増加は海外店 (2,708→5,915億円) に集中し、地域は中南米・北米。国内は+621億円と小幅 [SMFG/確定知見 仮説7・支持]。
- MUFG (正常化フェーズ・米州に斑): 不良債権比率は1.11%→0.96%へ改善。与信関係費用3,558億円は前期の海外大口戻入768億円の消滅+個別引当2,023億円の反動であり、水準自体は正常化。ただし米州開示債権は+816億円悪化 [MUFG/確定知見 H8・支持]。加えてRWAが106.9兆→120.3兆円へ増加しCET1比率は14.18%→12.47%へ低下、後発のShriram Finance出資7,069億円が翌期RWAをさらに押し上げる — 与信そのものより資本効率が経営テーマ化している。
- みずほ (転換点の入口): 直接減額 (回収不能部分の帳簿からの直接控除) が96,218→334,727百万円へ急増し大口処理を実行、同時にフォワードルッキング引当を107,440→162,156百万円へ積み増し [みずほ/確定知見 H9・一部支持]。貸倒引当金残高は7,558→6,373億円へ減少しており [みずほ/機械抽出差分]、処理と予防を同時に打った期と読める。
含意: 与信サイクルは「国内は静か、海外 (米州・新興国) で足音」という位置。益出し (政策株・債券) の動機として与信費用対策が3行とも底流にあり、テーマ2・3の売却フローは翌期も続くと見るのが自然。Q1のセグメント動向 (SMFGグローバル部門の減益) は海外与信の注視ポイント。
要確認事項
- MUFG通貨スワップ35.3兆円の通貨別・年限別構成 — 想定元本合計のみ開示。
- SMFGヘッジ会計通貨スワップ減少の性質 — ヘッジ外しか、トレーディング区分・現地調達への付け替えか。オープン外債 (為替未ヘッジ) 比率の変化も開示からは特定できない [SMFG/確定知見 仮説5]。
- みずほの繰延ヘッジ損益 (CFヘッジ分) の規制資本上の取扱 — CET1からの除外調整の有無が開示から確認できず、「繰延ヘッジ損失=資本毀損」の断定は保留のまま [みずほ/確定知見 H4]。
- みずほ与信費用の翌期増勢 — フォワードルッキング引当の前提シナリオと大口処理の残り。GMC内のS&T/ALM収益配分もヒアリング事項 [みずほ/確定知見 H5・H9]。
- MUFG満期保有「その他」10年超16,519億円の中身 (証券化商品等と推察・未確定) と、借用金圧縮の内訳 (日銀オペ種類別) [MUFG/確定知見]。
- SMFG特定取引資産のネット資産超過分の性質 (顧客向け債権性の時価か方向性ポジションか) [SMFG/確定知見 仮説4]。
- セグメント比較の基準差 — みずほ・MUFGのQ1前年比は組替後基準であり、会社間・期間間の厳密な突合には各社の組替前数値の入手が必要。
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かんたん財務分析くん